ポリエステル繊維の染色には分散染料が使用されます。その特徴として、下図の様に浴中に分散されている染料分子が一旦繊維表面に付着し、熱により繊維分子間に内部拡散されて染着します。
濃染加工とは、繊維表面に低屈折率の樹脂皮膜を形成させることで繊維への光の透過率が上がり、正反射が少なくなるために濃色効果が得られるというものです。実際は樹脂皮膜表面もクレーター状になっていますが、繊維表面にも凹凸があると、さらに光の正反射が少なくなり濃色効果が得られます。
濃染加工において濃度を上げるためには、染料や濃染樹脂の使用量を増やすことで可能ですが、常に堅牢度を意識して確認が必要となります。
上図の様に、堅牢度が良好な状態は、染料が繊維内部にあり表面の染着が少ない状態です。堅牢度は染料の使用量や染色後の洗浄効果で変化します。基本的に染色後洗浄で繊維表面付近の余分な染料を除去することが必要であり、多量に染料を使用すると、表面付着の染料も多く洗浄効果も悪くなります。
次に濃染加工樹脂は、基本的に分散染料を繊維から引き出す性質があります。その現象は、熱や湿度や時間によりその度合は異なり、加工の熱で発現する場合や経時的環境で発現する場合があります。また、濃染加工樹脂を多量に使用すると濃度は上がりますが、染料を引き出す力も強くなり、繊維内部の染料を次々と引き出し堅牢度を悪くする傾向があります。
これらの現象を回避して市場ニーズも意識した上での加工条件設定は容易ではありませんが、染料、濃染加工樹脂の種類と使用量や、染料と濃染加工樹脂の相性(染料の引き出され度合)を十分検証して、より高濃度高堅牢度クオリティーを随時追求しています。